生活を豊かにする本

人生の課題を乗り越えるために大事なこと 〜『あなたは人生に感謝ができますか?』より〜

生活を豊かにする本

今日は僕が大好きな佐々木正美先生の本、『あなたは人生に感謝ができますか?』を紹介していきたいと思います!

子育てをしていると何度も悩みます。

  • 「子どものわがままに、どう対応したらいいだろうか?」
  • 「子どもにいつも怒ってばかりの自分が、嫌になってくる」

こうした悩みに、寄り添うような優しい語り口で答えてくれるのが、佐々木正美先生の本の特徴です。育児をすることで、子どもも、親も幸せになれるようなマインドの持ち方が本から伝わってきます。

佐々木正美先生は、児童精神科医として、半世紀以上にわたり、心のケアが必要な子どもたちに、最前線で向き合ってきた方です。残念ながら2017年に81歳で亡くなられましたが、
たくさんの書籍を残しました。

そんな佐々木正美先生の本を読んでいると、「エリクソンのライフサイクルモデル」というものが頻繁に出てくることに気が付きます。

このライフサイクルモデルが重要であることは、文脈から明らかなのですが、本の中であまり詳しく解説されるわけでは無いので、その全容はわかりませんでした。

『あなたは人生に感謝ができますか?』は「エリクソンのライフサイクルモデル」について、先生が、みずからの人生を照らし合わせながら解説する本です。

ライフサイクルモデルの全容はもちろん、他の本ではあまり見られない、佐々木正美先生自身が、「人生の苦しい時期をどのように過ごしてきたのか」という部分や、「育児が負担」という風潮への嘆きやとまどいが見られます。

また、この本を読むと、ライフサイクルモデルの各課題をクリアしなければ、「人生に感謝ができない」ということもわかります。人生に感謝できるようになるには、発達の段階に応じて、8つの課題をクリアしなければならないのです。

「人生そのものに感謝できない人生」なんて、嫌ですよね?

この記事を読むことによって、ライフサイクルモデルについて知ることができます。

エリクソンのライフサイクルモデルとは何か

「エリクソンのライフサイクルモデル」とは、心理学者のエリク・H・エリクソンが提唱した「人間には、8つの発達段階があり、各段階でクリアすべき課題がある」という考え方です。

0−2歳の乳児期をスタートとして、56歳以上の老年期まで、この課題は存在します。

もしかしたら、あなたは学校に通っていた頃に、「発達課題」というものがあったことを覚えているかもしれません。これは、エリクソンのライフサイクルモデルの事を表しています。

ただ、僕たちが「発達課題」という言葉から受ける印象と、エリクソンの考え方はだいぶ異なるようです。以下は本書からの引用です。

エリクソンは実際には、発達課題という表現をしていないので、ここではエリクソンの言い方を紹介します。

エリクソンや、厳密な意味での精神分析家たちは、日本でいう発達課題のことを、もともとはサブジェクト・オブ・クライシスという言葉を使って表現してい ます。クライシス、つまり危機です。危機的な主題ということです。

エリクソンは、人生の各年代にはテーマがあり、それらを解決しないとクライシス、危機的な状態が訪れるというようなことを言ったんです。なかなかいい表現ですよね。

『あなたは人生に感謝ができますか?』(佐々木正美 著 講談社  2012/10/30)より

以上の引用からも分かるとおり、この発達段階というのは、「クリアしたほうが良い」どころではなく、「クリアしなければならない」というものです。

クリアできない場合、後の人生に極めて大きな影響を与えます。

ライフサイクルモデルについて覚えておかなければならない大事なこと4つ

ここからは、本書を読んで、僕が特に大事だと思ったことを書きます。

発達には順番があり、間を飛ばすことはできない

エリクソンのライフサイクルモデルにおける各年代の課題は、必ず順番にクリアする必要があります。
順番が先後したり、あいだを飛ばすことはありえません。

乳児期の「基本的信頼」をクリアしないまま、学童期の「勤勉性」をクリアすることなんて、絶対にできないのです。

発達段階の最後である老年期の課題は、「人生に感謝ができるか」ですが、そこまでたどり着くためには、7つの課題をクリアしなければならない。

この本のタイトルは、言い換えれば「あなたは、人生の危機的主題を乗り越えてきましたか?」ということなのです。基本中の基本ですが、これを無視してしまうと、非常に人生が難しくなります。

ソーシャル・リファレンシング

親として、子どもが非行に走るのは、とても辛いことです。非行に走る子どもと、そうでない子ども。なぜ別れてしまうのか?

これを大きく分けているのが、ソーシャル・リファレンシングと言われています。

ソーシャル・リファレンシングとは、乳児期において、子ども自身が、自分の事を見守ってくれる大人のことを、認識することです。こちらも本書から引用します。

自分のことを見守っている人がいるかどうか。多くの場合、母親です。父親や祖父母、保育士が見守っていることもあるでしょう。

監視することとは違いますよ。大人が子どもを確認するのではなくて、見守ってくれている人の存在を、子ども自身が確認するんです。そして安心するんです。

非行や犯罪に走った少年少女には、その時期に自分のことを継続して見守ってくれる人がいなかったという共通点がありました。

『あなたは人生に感謝ができますか?』(佐々木正美 著 講談社  2012/10/30)より

こう書くと、難しく感じるでしょうか?

でも、きっとあなたにも経験があるから大丈夫。子どもが何かした時に、振り返ってこっちを見たことがあるはずです。

そう、これもソーシャル・リファレンシングです。

子どもが何かできた時、新しいものを発見した時、あなたに向かって振り返ってきたはずです。これは、あなたのことを、「見守ってくれる人」だと認識しているのです。

そして大事なのは、子どもがこちらを見た時に、しっかりと見つめ返すこと。

子どもが振り返ってきた時に見ていなかったり、スマホなんかを見ているのは、無言のうちに「あなたを見てないよ」ってメッセージを送っているのと一緒です。

子どもにとって、いつでも目が合うということが、大きな信頼と安心を与えてくれるということを忘れないでください。

自主性を身につけるには、遊ぶ!

4〜7歳の児童期のテーマは自主性ですが、この自主性は、子どもが遊ぶことによって身につきます。

自主性とは、「好奇心を持って、自分から進んで動くこと」です。

なんでも自分でやってみようとする。そして限界を知る。それを遊びのなかで体験していく。遊びながら自分の力を知り、自分で目標を立てること、努力することを体験するんです。

『あなたは人生に感謝ができますか?』(佐々木正美 著 講談社  2012/10/30)より

この時期によく遊んだ子は、将来、努力できるようになります。

遊びのなかで自分の限界を知り、その壁をやぶるために工夫をした。実験をくり返すようにして、自分の可能性を広げた。その経験が、将来、自主的に活動する力の基盤になるんです。

『あなたは人生に感謝ができますか?』(佐々木正美 著 講談社  2012/10/30)より

子どもは遊ぶのが仕事と言われますが、本当にそうなのです。

そしてこの引用からわかることは、子どもの遊び方は、子ども自身が自分の想像力を膨らませて、
自分の壁を認識できることのほうが良い
ということです。

つまり、同じ遊び方でも、

  • 専用の遊具ではなく、遊び方の決まっていない砂場やボール。
  • 運動なら、少し怪我するくらいのチャレンジングな運動。

といったように、自由で、挑戦的な内容の方が良いのです

実のところ、僕は、子どもが怪我しないように先回りすることが、よくありました。だって、子どもが怪我する所は見たくありませんでしたからね。でも、この本を読んでからは、子どもがチャレンジングな事をしているときは、あえて見守るようにしました。

もちろん、大きな怪我をしてはいけませんから、見守ってあげることは必要です。でも、過保護になって、子どものささやかな挑戦をつぶすことがないように気をつけるようになったのです。

勤勉性はコミュニケーションから作られる

学童期(7〜12歳)のテーマは「勤勉性」ですが、これは意外にも、友達との共有体験から育まれます。

僕は勤勉性と聞いて、頭の良さをイメージしていたのですが、そうじゃないんです!頭の良さなんかよりも、友達とのコミュニケーションが大事なんです!

勉強はできた。放課後は学習塾に一生懸命通った。成績はよかった。そして、ひとりでゲームなどを楽しみ、息抜きをした。

それでは、どんなに好成績をおさめていても、質のいい生き方にはなっていきませんよね。人とのコミュニケーションがないでしょう。子どもにそういう努力、そういう生活をさせてはいけないんです。

『あなたは人生に感謝ができますか?』(佐々木正美 著 講談社  2012/10/30)より

優秀でも、コミュニケーションが希薄な人生は虚しいのです。

ちなみに、僕は個人的に、この部分に非常に共感するものがありました!

どんなに自分が優秀な成績をとっても、それを友達と共有できないのって、つまらないんですよ。これは子どもの時に限らず、大人になっても。

一方で、自分が考えてうまくいったこととか、自分がすごいと思ったことを、友達に聞いてもらえた時の嬉しさといったらないんです!仲間になれたような、そんな気がするのです。

勤勉性の基礎にあたる気持ちというのは、きっとこういう気持ちだと思います。頭の良さもあればいいけど、こうした仲間ができるということが学童期の最も大切なテーマです。

終わりに

今回は、佐々木正美先生の『あなたは人生に感謝ができますか?』を紹介しました。

僕は、エリクソンのライフサイクルモデルを知るうちに、自分がやりたいことを見つけられていなかったり、自主性が発揮できない原因が、実は非常に幼い時期にあることがわかりました。

この本を読みながら、自分自身の幼い頃を思い出し、危機的主題にどう取り組んでいたかを考えていました。多分、いくつか、やり残したことがありそうです。

あとがきを見るに、本書は口述を書き起こした本のようなので、
普段は見られない佐々木正美先生の考えが見えたりしましたが、
いつも通りに元気を与えてくれる言葉もありました。

私は、次の世代につながる仕事が、価値のある仕事だと思っています。

育児がまさにそうでしょう。

『あなたは人生に感謝ができますか?』(佐々木正美 著 講談社  2012/10/30)より

子どもと生涯通して向き合ってきた先生は、心からこう考えていたんでしょうね。

育児を褒める人ってあんまりいないけど、みんなすごい仕事をしているんですよね。やっぱり育児をしている人や、子どもたちの未来を考えている人たちへの尊敬を忘れてはいけないと改めて思いました。

佐々木正美先生の本は、有名なものでは『子供へのまなざし』シリーズがあります。僕は特に、先生のエッセンスがつまった『3歳までのかわいがり子育て』を事あるごとに読み直しています。

読めば読むほど発見がありますので、ぜひ読んでみてください!

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