読んだもの

今こそ日本はスウェーデンに学ぶべき! 〜『スウェーデン・パラドックス』の感想〜

今こそ日本はスウェーデンに学ぶべき! 〜『スウェーデン・パラドックス』の感想〜読んだもの
この記事は約8分で読めます。

先日、『スウェーデン・パラドックス』を読みました。

ここ最近読んだ本の中でも、ダントツに面白かったです!国際的な競争力を失くし続ける日本が、これからどうすれば良いのか。そのヒントにあふれている本でした。正直、日本よりGDPや人口といった面で10分の1以下の国が、これほどパワフルだとは!

そもそも、スウェーデン・パラドックスとは何なのか。

これは、高福祉の国として知られるスウェーデンが、同時に国際的な競争力で常に上位をキープしているという、一見矛盾した状態を表したものです。「福祉を重視しているのに、経済的にも優れているのはおかしい!」ってことですね。

スウェーデンは、VAT(消費税にあたるもの)が25%であるなど、個人の負担が大きい国として知られていますが、同時に、非常に競争力の高い国です。GDPの規模では日本の10分の1ほどですが、1人当たり名目GDPで比較すると、スウェーデンが54,356US$なのに対し、日本は39,304US$で日本より30%ほど高い数値になっています。スウェーデンは、日本よりもミニマムでパワフルな国であるといえます

さらに、今年2020年の世界競争力ランキングでは、スウェーデンが6位日本は34位となっています。

競争力とは貿易統計の他に、「経済パフォーマンス」「政府効率」「ビジネス効率」「インフラ」」などから総合的に判断されます。スウェーデンは常に上位をキープしているのに対して、日本は年々順位を落とし続けており、環境が悪化していることが分かります。

この本は、その「スウェーデン・パラドックス」がなぜ可能となっているのか、社会構造や仕組みにどんな秘密があるのかを解説した本です。また、この本の発刊当時(2010年)の与党であった民主党政権へ、「これから日本がスウェーデンに学ぶべきこと」を提言した本でもあります。

日本より人口や経済規模の面でミニマムな国であるスウェーデンのやり方を、そのまま当てはめることはできませんが、日本は今後、少子化で労働力に限りが出てくるのは確実です。この本を読んで「スウェーデンはすごい!日本もこれは取り入れるべき!」と思う点がたくさんありましたので、今回はそれらを紹介していきたいと思います!

スウェーデンは、高福祉を実現するために、「高い国際競争力をもつこと」を第一として、社会構造や教育の仕組みがデザインされています。「高競争力による経済的余裕」が「高福祉」の土台にあります。これから紹介する制度や仕組みも、そうした考え方が根底にあります。

義務教育は大学まで無償!

スウェーデンは義務教育が大学まで無償です!
授業料だけでなく、教科書などの実費まで無料です!うらやましい!

教育内容は実学志向であり、卒業して就職した後、社会でそのまま活かせるようなスキルや考え方を身につけます。そのため、大学の卒業証書が、そのまま弁護士や看護師などの資格証明を兼ねています。「大学の卒業=その資格を持って仕事すること」なのです。これは日本の大学との大きな違いですね!

この特徴があるため、スウェーデンでは社会人になった後に大学に入るということが一般的です。

例えば、就職後になんらかの理由で離職して、別のキャリアに転換する際、大学に入って資格とスキルを身に着けて再就職するのです。このように、大学が職業訓練の役割をもっていて、キャリア転換がしやすいようになっているのです。

スウェーデン社会の大きな特徴として、「斜陽産業は自然淘汰させ、そこから流れた人材を成長産業にシフトする」があります。その方が、全体的に見て国民のためになると考えられているのです。

この大学教育まで無償という制度も、「斜陽産業をクビになる→大学で勉強して成長産業へ就職する」という人材シフトをスムーズにする仕組みの一つです。「斜陽産業を自然淘汰させる」というのは日本では到底できませんし、むしろ国が救済することがほとんどですが、国家全体から見ると、スウェーデンのやり方は非常に合理的な仕組みです。

ちなみに、スウェーデンでは失業しても、失業保険が80%保障されているので生活もそれほど困窮せずに済みます。

政府のIT整備がすごい!

ITインフラの整備も非常に進んでいます!

ITインフラといっても色々あるのですが、国民共通番号(日本ではマイナンバー)、E-Govの整備といった部分が非常に進んでいます。どれくらい進んでいるかというと、引っ越しや納税の行政手続きがオンラインで完結するほどです。WEFのITインフラランキングでも、スウェーデンは常に上位をキープしています。

マイナンバーの普及率が2020年時点で未だに16%の日本とは雲泥の差です。E-Govの電子申請は日本にもありますが、とても使いやすいものではありません。

やはり、国民共通番号の普及が果たす役割は大きく、スウェーデンでは金融機関や電話会社もこの番号を利用して顧客の紐付けを行っています。情報の利用をどこまで許すかという課題はありますが、少なくとも行政や税金といった範囲で、この番号が活用されることのメリットは計り知れません。

10万円給付の際、各自治体がオンラインの申請ではなく、郵送申請を奨励したことが話題となりましたが、スウェーデンで同じことは起きなかったでしょう。この点は、日本がおおいに見習うべき点です。

「働くこと」について、労働者と業界団体がシナジーを生みだす

スウェーデンでは労働組合の組織率が77%を超えています。

これは労働者保護という観点もありますが、実は、スウェーデンでは労働組合を束ねる団体と業界団体が毎年協議を行っており、業界ごと・職種ごとの賃金を統一しているのです。つまり、スウェーデンで転職しようとしたら、同業界で同職種の場合、どの企業もほとんど変わらない賃金となります。

なぜ、わざわざ労働組合と業界団体が賃金を統一しているのか?
これはスウェーデンの斜陽産業は自然淘汰させるという考え方に理由があります。

同業界で同一賃金であるということは、同じ業界の中で効率性の高い企業にとっては労働コストが安くなり、逆に効率性の悪い企業にとっては労働コストが高くなるのです。結果、業界の中で自然淘汰が進みます。なかなかスゴい話ですよね(^_^;)

賃金の統一なんてしたら、労働者に不利益じゃないの?と思いますが、ここは労働者側もすごいところで、どの労働組合もシンクタンク部門を持っています。つまり、経済情勢や社会の動きをみて、自分たちがどのように交渉すれば一番有利になれるか分かっています。労働者側と業界団体が対抗するのではなく、お互いの協議で全体の利益を目指すのです。

政府と業界団体、労働者が目指すことは一つ、「国際競争力を高めること」です。この目的を達成するために、立場の違う人たちが、協議して良いやり方を模索していくという姿勢が素晴らしい。日本が本当に学ぶべき姿勢は、この考え方です。これから日本は非常に苦しい時代を迎えますが、そうした中でこそ、異なる意見からシナジーを生み出す必要があります。

終わりに

いかがでしたでしょうか。スウェーデンのスゴさが伝わりましたでしょうか?

もちろん、スウェーデンも問題が無いわけではありません。同一賃金であるために、リストラの際は経験の浅い若年層から解雇されます。また、大学教育は無償ですが、就業後も賃金は上がりにくいため、卒業まで時間がかかる割には給与が低いという現象も起きています。また、そもそも高競争力が社会の土台になっているので、その土台が崩れたら…という課題もあります。

しかし、スウェーデンがこれまで、社会問題に柔軟に対応して、世界上位の競争力を維持してきたことは間違いありません。

この本を読んでいる時に、安倍総理が健康上の問題から辞任することになりました。
アベノミクスによるデフレ脱却はできましたが、少子化問題など、本当に深刻な問題が山積みです。

『スウェーデン・パラドックス』は10年前の本ですが、今こそスウェーデンに学ぶべきだと信じてやみません。僕もいつか、スウェーデンに行ってエッセンスを学びたいです。

タイトルとURLをコピーしました