親の大切なつとめの中に、「子どもの不安を和らげる」というものがあります。
「不安を和らげる」というのは、子どもにとって安心する空間を作るということです。
家の中が定番ですが、時と場合に応じて「膝の上」だったり、「だっこ」がその空間となることがあります。
こうした空間が必要であることは、よく、子どもが大泣きした時や、なにか嫌なことがあって悲しい気持ちになっている時に、なんとなく感じられるものだと思います。
この空間は、子どもの心をなぐさめる時だけではなく、子どもが「挑戦をするとき」にも必要です。
子どもが何かをしたそうな素振りをしていても、不安や怖さを感じて「できない」となっているようなとき、親が安心できる空間を作ることで、子どもの挑戦を後押しできるかもしれません。
これについて先日、妻から学んだ印象的な出来事がありました。今回はそのお話です。
一番怖さを感じる所に、安心できる空間をつくる
僕の子どもにとって、公園の中で、遊びたくても怖くて遊べないものがありました。

足場に乗るとグラグラしてしまうので、不安定な足場に乗った経験のない我が子にとっては、
未知の体験。だからこそ「怖い」。
他のお友達が乗り継いでいるのを見て、やってみたいような素振りを見せても、乗ってみると足場がグラグラして、どうしてもできない。そんな状態が1ヶ月ほど続き、僕もどうしたものかと思いながらも、いつかできるようになると思い、気長に待つつもりでいました。
ところが先日、妻と一緒にこの遊具まで来たとき、いつものように足場を渡れずに「こわい」という子どもの姿を妻が見ると、遊具の足場と足場の間にまたがったのです。ちょうど、子どもが足場を渡る時、妻の足元を通るように。
すると、あれほど怖いといっていた子どもが、少しずつですが笑いながら、次の足場に手を伸ばし、渡ることができたのです。
あまりのあっけなさに僕はびっくりしてしまって、目の前で起こった変化が信じられませんでした。
でも、考えてみれば簡単で、親の足元というのは子どもにとって、とても慣れ親しんだ空間です。
その空間が、一番怖いと感じていた足場と足場の間にできたことによって、子どもにとって「ここならやってみても大丈夫」という確信を与えたのです。
ここから僕は、親の大事な役目の一つは、子どもが一番怖いと思う所に、安心できる空間を作ることだと確信しました。
最初の体験を、親が支える
子どもにとって、やはり一番怖いのは「最初の体験」です。
子どもにとって、未知は恐怖です。グラグラする遊具なら「落ちたらどうしよう」と思うでしょうし、初めてのお友達なら「仲良くできるかな?」と思うでしょう。常に、不安なことだらけです。
でも、多くの体験がそうであるように、一度体験してみればどんどん慣れることができるし、上手くできなくても練習すれば上手になれる。大切なのは、とにかく最初の体験をすること。
だからこそ、最初の体験をするときのハードルを下げてあげるのが、親の腕の見せ所なんだと思います。僕の妻がしたような「安心できる空間を作ること」は一つの解でした。「そばで支える」というのも一つの方法でしょう。
いずれにしても共通していることは、信頼関係が成り立っている上で、
「そばにいるから大丈夫だよ」というメッセージを送ることです。
安心できる空間が必要なのは、子どもだけじゃなく大人だって同じ
今回の出来事は僕にとって非常に印象的でしたが、考えてみれば仕事でも同じです。
初めての仕事の時に、中身を誰も知っている人がいなかったり、相談できる先が無いときは、非常に不安な気持ちになります。失敗したらどうしようと思うから、当然、思い切ったチャレンジなんてできません。チャレンジがなくなれば仕事の成果は上がりませんし、効率もどんどん落ちていきます。
こうした点で、「仕事をする上で他に頼れる先があるか」「気軽に相談をしたり、意見を言うことができるか」というのは、非常に重要な要素です。職場の中にこうした人間関係が欠落していると、その部分だけ明らかに効率が落ちます。
僕は他のメンバーのフォローにはなるべく気を付けていますが、特にこの点に関しては、一層注意しようと、改めて決意しました。
おわりに
今回は、僕が公園で体験した出来事から、「安心できる空間をつくること」の大切さについて書きました。
- 子どもにとって安心できる空間を作ることは、子どもの心をなぐさめる時だけではなく、子どもが「挑戦をするとき」にも必要。
- 特に、子どもが「一番怖いと思うポイント」に空間を作ることが大切。
- 多くの場合、一番怖いのは「未知(はじめて)の体験」
- 大人だって、安心できる空間が必要。
今回の記事では、「親が安心できる空間を作ることの大切さ」について書きましたが、それが子どもにとっての障害を「取り除いていないか」ということには気をつけないといけないですね。その空間が挑戦自体を阻害していたり、逃避の場所になってしまうと、それは子どもにとって悪いことになってしまいます。
この違いは紙一重で難しい所なので、これからも考えていかなければなりませんね。