今日は読んだ本の感想です。石井光太さんの『鬼畜の家』です。
読むのが本当に辛かったのですが、それでも、この本は育児を考える方には(いつかは)読んでほしい本だと思いました。
育児や子育ての喜びをもっと多くの人が感じることができるようになるために、それに必要な示唆が含まれた一冊だと思います。
『鬼畜の家』 3つの子殺し事件から、私達が学ぶべきことを綴ったノンフィクション
「わが子を殺す親たち」という副題の通り、『鬼畜の家』は親が子を死なせた3つの事件の関係者に、石井光太さんがインタビューして分かった事実が書かれたノンフィクション作品です。
僕は以前、『遺体』『絶対貧困』を読んでから石井光太さんのファンです。
この本は正直、読んでいて呆れ、イライラし、理解できないと何度も感じた作品です。
3つの事件、
「厚木市幼児餓死白骨化事件」
「下田市嬰児連続殺害事件」
「足立区ウサギ用ケージ監禁虐待死事件」
これらのタイトルを読んだだけでも、僕の気持ちをある程度察することができるのではないでしょうか。
普段、佐々木正美先生の本をはじめとして、子どもを守る立場の人たちの本を読んでいる僕にとって、この本で出てくる登場人物たちは理解が及びません。嘘や脅迫を当たり前のように使い、生活能力がなく、いつも同じ過ちをするような人たちです。
でも、この本を読んで感じたのは、こうした人達が「鬼畜」と報道されて、社会から非難を浴び、それで満足した社会が事件を忘れていく、というだけでは何も変わらないということです。
もし根本のところで負の連鎖を断ち切ろうとするなら、親が育児をする前から家庭の支援をはじめなければならないだろう。
まっとうな子育てができない親がいることを認めた上で、出産直後、いや出産の前からそうした親の生活を支え、適切な育児が何かを教え、困難にぶつかればすぐに専門家が手を差し伸べられるような環境づくりが必要だ。
そこまでしなければ、虐待の萌芽を摘みとることは難しい。
『鬼畜の家』P.340,新潮文庫,2019年
この本の登場人物たちは確かに問題がある親ばかりなのですが、実際にはその異常性はさらに上の親世代から引き継がれているものであり、真に原因を作ったのは「鬼畜」な親たちの親世代なのです。
そして、事件の関係者たちは時がたてば、また同じ親や兄弟、地域社会と関わります。同じ悲劇が繰り返されることは想像に難くありません。
これから親になる人達に社会が働きかけることができなければ、いつまでたっても同じことは繰り返されるのです。
では僕たちができることは何なのか?
僕たちができること。それは子どもたちに「人を愛するとは何なのか」と教えることではないでしょうか。
もっと言えば、社会の中で「子どもを愛するって〇〇だよね!」と共通認識を作ることだと思います。
事件を起こした親たちが揃えて「自分なりに子どもを愛していた」と言っているのは重要なことです。
彼らは彼らなりに子どもを大事にしていたのに、その「大事にしていた」というのがあまりにも世間一般の基準とはかけ離れていたために事件が起きたのです。
上の引用文の「適切な育児が何かを教え」という部分に僕は強く感じるものがありましたが、それは「この親たちが、どこかで子どもの愛し方を知ってさえいれば」と思ったからです。
異常性をもつ親世代の元で育った子どもや大人に、これを教えることは実際には難しいことです。
それでも、社会の中で共通認識が明確になっていれば、教えることができる可能性は高くなります。
難しいことですが、二度と同じような事件を起こさないためにも、少しずつ変えていくことが大事なんだと思います。
終わりに
今日は石井光太さんの『鬼畜の家』の感想から、僕たちができることについて書いてみました。
ここまで書いてきましたが、実は僕自身も「適切な子育て」を明確には定義できていません。
「子育てとは、待つこと」
「子育てとは未来を作る、人生で最高の仕事」
「子どもへの愛情とは、ただ生きているだけで嬉しいという気持ち」
といったようにこれまで読んだ本や、佐々木正美先生、森信三先生の言葉から大切にしようと思ったものはありますが、それをまとめてなんと表現すれば良いのか、自分の行動に表すと何なのかということは、まだモヤがかかったままです。
いつか定義できるようになるのでしょうか。
それには僕自身、色々な親の気持ち、意見。子どもたちの気持ち、意見を聞いていく必要がありそうです。僕自身も、まだまだ精進が必要ですね。